90年代の半ば以降,インターネットの普及は爆発的に進んだ。とりわけ,ここ1~2年の間に,各大学において自習用端末の導入が相次いだことにより,学生がネットワーク化されたコンピュータを利用し得る環境が急速に整備された。こうした情報環境の変化は,大学における外国語教育においても新しい可能性をもたらした。外国語学習への応用という観点から見ると,ネットワーク化されたコンピュータには,(1)チューター的な機能,(2)便利な道具としての機能,(3)公共的な発表や議論の場を提供する機能,(4)コミュニケーション手段としての機能,(5)情報源としての機能などのさまざまな可能性がある。本稿では,そのひとつである「インターネットの公共的な発表空間としての機能」について着目し,広島大学における初級ドイツ語教育の場での課題作文を例にとって,こうした機能の外国語授業への応用可能性について論じる。 CALL(Computer-Assisted Language Learning)というと,しばしば,コンピュータのチューター的な機能のみが注目され,学習プログラムを使って行う機械的な練習というイメージが先行する。また,これまで,そうした利用法において,教授法的なあるいは教育理論的な表付けが必ずしも明確にされてこなかったことから,今日における学習者中心型の授業コンセプトやコミュニカテイブな教授法との整合性が問題にされることも多い。本稿では,こうした議論もふまえながら,ややもすればチューター的な機能に片寄りがちな外国語教育へのコンピュータの利用を,より広い枠組みのなかで考えるための事例を提供する。