本稿は,「いつまで経っても完成しない」という広島市の都市づくりについて,その背景にある問題の本質を,リスクマネジメントの視点から探ることを目的とした論稿である。広島駅前市街地再開発事業を具体的な事例として取り上げ,硬直的なリスク処理,不正確なリスク範囲の認識,さらには曖昧なリスク分担を事業の遅延を引き起こす要因として分析した。さらに,広島駅前地区の戦災復興の過程について,類似地区である大阪市上六地区との比較を通じて検証した結果,行政主導の閉鎖的なリスク処理の実態が明らかとなった。そして,こうしたリスクに適切に対応するためのリスクマネジメントの必要性と,それを実現する市民と行政の間のリスクコミュニケーションの重要性を指摘した。