地方公営企業法に基づく特別会計を設置するには,特別会計設置条例が必要とする説と,これを不要とする説の2つがある。普通地方公共団体の会計は財政民主主義の観点からは単一会計が望ましいとされ,特別会計の設置はこの例外にあたるが,わが国は特別会計法によって特別会計設置の濫設を防止している。ところが,地方自治法制においては,地方公営企業法により当然に特別会計を設置しなければならないことから,特別会計設置条例を必要としないという説が有力である。そこで本稿は,特別会計設置にかんして,地方自治法,地方財政法及ぴ地方公営企業法の沿革を整理した上で.総務省調査から特定した一地方団体の事例分析を行い,会計情報を条例必要説,不要説のいずれが会計情報を適切に伝え得るのかを検討した。
セグメント情報の開示の観点から特別会計設置条例が有効であるとの結論を示し,条例必要説を支持することとした。