租税政策および租税立法を規律づけるものとして,租税法学の観点からはその一つとして憲法が挙げられうる。ドイツ租税法学における議論を見ると,憲法上の原則を具体化しつつ首尾一貫して実施することによって,租税原則を実現する租税制度が構築されると言われる。この言明の背景には連邦憲法裁判所による政策形成の可能性があると思われる。ところが,かような具体化の可能性はいくつか想定しうるのであり,加えて,一例として所得税法を参照しても,租税理論(消費型所得概念)に照らして最適な租税制度が構築されているわけでは必ずしもない。これは税務執行の考慮,さらに租税立法過程という政治的妥協の場において現実の租税政策は形成されることに拠ろう。したがって,租税立法につき憲法上の原則を基礎としつつ租税政策論を展開するドイツ租税法学には原則として与することはできるが,租税法における立法過程論の構築にも歩みだす必要があろう。