速く走るためには,「腕振り」やキックからの「踵の引きつけ」「もも上げ」「膝下の振り出し」等の動き方に中心があると従来は解釈されており,その理論を授業でも取り上げて展開してきた。しかし,陸上競技における短距離走の世界では,この十数年の間に,そのような外面的な動きにとらわれる考え方が根本から見直され,新たなフォームや個々の選手にあった身体の使い方が研究されている。今回の中学生を対象にした授業では,現在トップアスリートがベースにしている考え方や感覚に触れ,走ることについての身体感覚を個々の生徒が磨きながら学習するようにした。さらに,個々の生徒がつかんだ感覚を他の生徒にも還元することで,自分にとって効率よく速く「走る」方法を獲得するための身体感覚にはどのようなものがあるのかを「探り」・「深め」,ひいては記録の向上をも図った。その結果,走ることが苦手な生徒に特に成果が現れたと思われる。