新教育基本法の成立により,宗教教育は,従前からの「宗教に関する寛容の態度」の育成,「宗教の社会的地位」の理解に,新たに「宗教に関する一般的な教養」の習得が加えられることになった。早晩,新観点の「宗教に関する一般的な教養」の習得は,学習指導要領に反映されることになる。歴史教育もそれに対して無頓着ではいられないだろう。本小論では,高等学校の歴史教育における宗教教育の現状を検討するとともに,社会科歴史教育における宗教知識教育のあり方について考察し,具体的な教育内容を開発して教授書の形式で提示する。開発した教育内容は,近世のスペインと日本における君主国家の宗教禁圧政策であり,これにより,宗教の暴力性・政治と宗教の関係などに関する概念的な知識の習得をめざしている。