最近,海洋生化学資源の開発が重要視され,海産物由来のいくつかの有効物質が単離・同定されて,その生化学的および薬理学的役割が検討されてきている。その中で,海藻中にも2,3の有効物質が明らかにされてはいるものの,その数は少ない。本研究では,海藻中の有効物質が含窒素化合物に多いことから,海藻中の第4級アンモニウム塩基を7種の紅藻および緑藻を用いて検索した。
各海藻の70%エタノール抽出液中の第4級アンモニウム塩基をイオン交換カラムクロマトグラフィーを用いて単離・精製し,そのTLC上のRf値,IRスペクトルおよび融点を測定して,購入および合成した既知の第4級アンモニウム塩基のそれらと比較することにより同定した。その結果, laminine, candicine, stachydrine, glycine betaine, betonicine, β-homobetaineおよびγ-boutyrobetaineと2種の未同定塩基を検出した。candicineが海藻中から単離・同定されたのは,今回が最初と思われる。これら塩基の海藻種間における分布に関しては,特に特異性は認められなかった。