E.carotovoraは代表的な軟腐病菌であり,強力なエンドペクチナーゼを生産することで知られている。本研究で用いたW2株もE.carotovoraに属することがわかっている。しかしW2株は通常株と異なり,エンド酵素をつくらず,エキソペクテートリアーゼ(exo-PAL)のみを生産するので理想的なexo-PAL給源である。前報ではexo-PALを菌体外酵素として分離したが,最近,この酵素が菌体内にも多量に生産されることを知った。両酵素がかなりな純度にまで精製されたので,ここでは精製法と2,3の性質について報告した。なお,両酵素はセルロースイオン交換体で処理すると,それぞれ二つの画分に分かれたので,仮に菌体外酵素を1-A,1-B,菌体内酵素を2-A,2-Bと呼ぶことにした。ただし1-Aについては量的にわずかであったので検討しなかった。各酵素の回収率は1-B21.6%,2-A21.4%及び2-B14.0%であった。
3種類の酵素の性質は調査範囲内では非常によく一致した。すなわち,(1) 最適pHは9付近である。(2) Na+(15mM)で強く活性化される。Mn2+とCo2+はNa+の有無にかかわらず弱い促進効果を示すが,Ca2+はNa+無添加でのみ弱い促進効果を示す。(3) Cu2+,Hg2+,Sr2+,Mg2+及びBa2+は程度は異なるが,いずれも阻害作用を示す。(4) EDTA(1mM)の添加で完全に失活する。
以上の結果は菌体外酵素と菌体内酵素が同一酵素であることを示しているものと思われる。なお酵素給源としては,菌体内酵素の方が精製も容易であり,総回収率も高いので有利である。