中等教育研究紀要 /広島大学附属福山中・高等学校 63 巻
2023-05-31 発行

数学の受験テクニック再考 : 構成主義者M. Simonのアプローチを応用した入試問題分析

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Fukuyama-ChutoKyoiku-KenkyuKiyo_63_25.pdf
Abstract
本稿は,受験テクニックを悪しきものとして一蹴してしまわず,大学入試問題の解決にあたってどのような能力が実際に必要であるかを検討・吟味し,数学教育への示唆を得ることを目的とした入試問題分析を行う。本稿では,試みに東京大学の令和4 年度第2 次学力試験「数学 (理科)」大問2 を分析対象とし,M. Simon らの提唱するLearning Through Activity アプローチによる概念的学習の視座と,G. ポリアによる問題解決ストラテジーの視座からの特徴付けを行った。結果,分析対象となった問題が概ね,数学教育研究として重要視されてきた概念的学習と問題解決学習の双方の成果を総合的に問う問題になっているということが示唆された。また同時に,概念的学習と問題解決学習だけでは達成し得ない技能として,「1つ前の小問で行った過程を反省して次の小問に活かす」という技能の存在が指摘された。この技能は,数学者が証明をする理由とも密接に関わる技能であり,単なる受験テクニックと捉えるべきではない。今後の課題としては,推論主義と呼ばれる哲学の視座からこの問題にアプローチできる可能性を示した。
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