低品質粗飼料のアルカリ処理による飼料価値の向上の原因を追究する目的で,稲わら,大麦わらおよびもみ殻のアルカリ処理を施したものについて,その化学的組成の変化と走査電顕下の組織学的変化が,山羊のルーメン内での消化に及ぼす影響を検討した。
NaOH液で煮沸処理し,水洗した後の乾物の消失率は稲わらでは62%,大麦わらでは53%,もみ殻では49%とかなり大きい。粗蛋白質とシリカは殆んど全部消失し,NFE,リグニンおよびヘミセルロースもかなり消失する。一方粗センイ,ADFおよびセルロースの損失は少ない。
NaOH処理はこれらの低品質粗飼料の表面構造に大きく変化を与え,表皮の表層をなすシリカの溶脱のみでなく,表皮下のセンイ組織や柔組織を露出するなど,その全体的な構造に大きな変化をもたらすことが認められた。山羊のルーメン内での消化は,アルカリ処理を施した試料では,乾物についても,その他のセンイ成分についても約2倍に改善された。このことは上述の細胞壁組織の全体的な構造的変化が,シリカなどの阻害物質の除去と相まって,微生物,従って分解酵素のセルロースやヘミセルロースなどの可消化成分への接触と攻撃を容易にしたためと考えられる。