1. 長期の航海に際して,植物プランクトンを固定せずに,生きたままで観察する方法として,防振装置を用いて船舶上で顕微鏡観察,写真撮影を行なうことを試みた。
2. 種々の防振材,防振装置について検討を行なった結果,明立精器”バイソレータD-150AD”を用いることによって,この目的を達成することができた。
3. 本報では,先ず,船舶上での顕微鏡観察,写真撮影の方法を示し,
4. 練習船豊潮丸によって行なわれた数次の航海に際して撮影された,植物プランクトンのうちから,珪藻類に属するCoscinodiscus perforatus var. pavillardiと,渦鞭毛藻類に属するGymnodinium splendens, Peridinium punctulatum, Ceratium furca, C. bucephalumおよび未同定の有殻の渦鞭毛藻類の一種の写真を示し,簡単な説明を添えた。
5. これらの写真のあるものでは,生物の微細構造が明瞭に観察され,今回用いた方法が,目的によく適ったすぐれたものであることを示している。
6. また,他の写真では,植物プランクトンの細胞分裂や,細胞質の殻からの脱出などの様子が示されており,現場近くの船舶上で顕微鏡観察を行なうこと自体が,”生きた”植物プランクトンの研究を行なう上で,極めて有効な方法であることを示している。