反芻家畜における濃厚飼料多給時の反芻行動を調べるため,山羊4頭を供試し,飼料中の乾草を10%, 20%, 30%, 40%, 60%, 80%とした給与割合の異なる6種の飼料を給与し, 反芻時間,再咀しゃく時間,吐出回数, 反芻期回数などを測定し検討した結果は次の通りである。
1. 乾草割合が増加するにつれて反芻時間は162分(乾草10%給与)~590分(乾草80%給与)に増加した。同様に再咀しゃく時間は104分~472分,吐出回数は152回~608回に増加した。しかしそれらの増加割合はいづれも30%を境として異なる傾向が認められた。
2. 反芻期回数は乾草30%~80%給与ではほぼ一定であったが,乾草10%, 20%給与では減少した。
3. 乾草単位摂取量当りの再咀しゃく時間は乾草給与割合が低率になるにつれて増加の傾向があったが,特に10%給与では急増する傾向が認められた。
4. 各反芻行動に供試山羊の個体差が認められ,特に乾草10%給与では顕著であった。
5. 以上の結果から正常な反芻行動を起こさせるためには,粗飼料として30%以上必要なことが示唆された。