産卵中の雌鶏の頭部皮膚の毛細血管構築像を,メチルメタクリレート鋳型標本によって,走査電子顕微鏡を用いて観察し,以下の所見を得た。
1. 鶏の頭部の肉冠,肉垂などの無羽域部の皮膚は,表皮の直下に極めて密性な毛細血管網を構築していた。嘴上部,前頭部,冠状部,眼険,眼険上部,頬部,側頭部などのごとく小型の羽毛を持っている皮膚も,肉冠,肉垂に劣らない密性の毛細血管網を具えていた。
2. 後頭部のごとく比較的大型の羽毛を持っている皮膚では,皮膚の毛細血管は羽包を中心に血管網を形成していた。したがって,頭部皮膚の毛細血管網の緻密性,複雑性は羽毛の大きさ,分布が関係していた。
3. 肉冠,肉垂の皮膚毛細血管網は洞様毛細血管で構築されていた。羽域部の血管網は,やや太い捻転の著しい毛細血管で糸球状に構築されていた。
4. 頭部皮膚のほぼ全体が,密性な皮膚毛細血管網で覆われていたことから,鶏体において肉冠,肉垂を含む頭部皮膚全体が,体熱放散の機能を果たしていることが推察された。