運動性レンサ球菌について,前報で分類不明として報告した3株について,さらに詳細に血清学的,生理学的性状試験を行なって同定を試みた。また,これらの株の形態学的観察およびこれと同じN群運動性レンサ球菌の分布調査を原料乳について行なった。それらの成績は以下のように要約される。
1. 前回,分類不明として報告した3株の同定試験の結果,何れもN群のStreptococcus lactisであることが判明した。運動性S. lactisの存在を明らかにしたのはこれが最初と考えられる。
2. べん毛染色および電子顕微鏡による観察の結果,S. lactisのべん毛形態はS. faeciumのそれと同じであった。これらの株のべん毛の長さは5~10μ,波長2.5~3.0μ,振幅は0.7~0.8μ,べん毛数は双球菌で多いものは10本であり,周毛性であった。
3. 暗視野顕微鏡による運動形式の観察では,他の有べん毛菌に比べて動きはゆるやかであった。
4. わが国および西ドイツにおける原料乳についての調査で,運動性S. faeciumは多数検出されたが,目的とする運動性S. lactisは検出できなかった。
すなわち,運動性N群レンサ球菌の存在はやはり少ないようである。