本論は,「日常の論理」の教育のために必要な準備を行うものである。日常の論理は,非形式論理学の論理であり,形式論理学の論理と対照をなす。日常の論理は,議論の論理・説明の論理・感化の論理の三つに分類できる。議論の論理は,正しさを立証するもの,説明の論理は,すでに正しいと考えられていることの原因や理由などを説明するもの,感化の論理は,まだ正しいとは限らない主張によって受け手を感化するものとした。また,トポス(=通念)論を援用し,議論の論理は,固有のトポス(領域固有の知識)を出発点として,専門家が専門家に向けたもの,説明の論理は,固有のトポスを出発点として,専門家が大衆に向けたもので,小中の説明文に見られるもの,感化の論理は,共通のトポス(人々がそう考える傾向)を出発点として,大衆(多くの場合非専門家的な知識人)が大衆に向けたもので,中高の評論文に見られるもの,とした。さらに,それぞれの特質に合わせた教育の必要性が展望されるとした。