本稿の目的は, キャリア選択行動に対する準備が充分ではない学生を, 就職活動以前にスクリーニングし, 個別・追加的なキャリア支援が可能であるか否かについて検討することである。本稿では, キャリア支援の可能性について, 介入により操作可能な能動的概念として, 教育や心理療法分野で実証研究が進められている認知的変数に着目し検討を行う。具体的には, まず就職活動前(大学3年生6月)の時点で, 学生のキャリア発達にはどの様な個人差があるのかについて, 職業未決定尺度を用いて測定・分類し(分析1), 次にキャリア選択行動に影響を及ぼすであろう認知的変数(キャリア選択自己効力感, 特性的自己効力感, Locus of Control)が, それぞれの職業未決定状態をどの程度予測できるのかについて, 階層的重回帰分析を用いて検討した(分析2)。
分析の結果, 調査対象者のキャリア発達段階(=職業未決定状態)は多様であり, それぞれの未決定状態は, 説明力に差があるものの(R^2=.071~.270)認知的変数によってある程度予測可能であることが明らかになった。したがって, 同じ状況(大学・系統・学年)の学生であっても, キャリア発達段階には個人差があり, それぞれの職業未決定状態は, 認知的変数を変容させる介入を行うことによって操作可能であることが示唆された。