本稿は, 多角化戦略を中心とした成長戦略に関する先行研究の様々な議論をまとめて, 中国企業の多角化戦略に関する検討を行い, さらに重回帰分析で製品多角化戦略とパフォーマンスに関する実証研究を行った。その結果, 他の国とは異なり, 中国企業は他の戦略パターンよりも主力事業戦略のほうがより良い経済成果に結びつくことを明らかにした。この結果は既存の理論では説明できないため, 一考察として中国企業はある程度多角化しているが, 多角化するためのリソースがまだ蓄積されていないことが挙げられる。しかし, この結果は既存の多角化戦略を中心とした諸理論をそのまま中国企業に適用することが困難であるということも示唆する。したがって今後の課題として, ①先進経済と新興経済の相違②経済体制の相違という2つの視点から, 独自の多角化理論を検討する必要がある。これにより, 従来の理論をより精緻化させることが期待できる。