ヒトの意識水準は入眠に伴って低下するが,外界に対する注意機構は失われるわけでなく,睡眠中も持続的に機能していることが示されている.中でもREM (rapid eye movement) 睡眠期の心理・行動特性は,覚醒時の水準に近いと考えられており,外部刺激に対して行動反応することが出来るという報告や,夢見体験という精神活動が多く報告されている (例えばAserinsky & Kleitman, 1953;Dement & Kleitman, 1957; Jouvet et al., 1959).しかし,脳波パタンは,入眠期の睡眠段階1 に近く,低振幅で不規則な状態である.また,入眠期にも,入眠時心像と呼ばれる心理体験が生じることや緩徐な眼球運動 (slow eye movement, SEM) が現れることなど,REM睡眠期と入眠期には共通項が多いといえる. 睡眠中の脳内の情報処理過程を検討する上で,有効な指標として事象関連電位 (event-relatedpotential, 以下ERP と略す) が挙げられる.睡眠中のERP の研究報告は数多く,これらの研究もまた,睡眠中にも脳は外部刺激に対して応答しているという証拠を示している. 本研究では,覚醒時とREM 睡眠期と入眠期の外界刺激に対する応答性をERP を用いて比較する