本研究の目的は,気管内挿管中の早産児の痛みを伴う処置に対する顔表情を記述的に記録し,痛みの指標としての顔表情を明らかにすることである。在胎26週1日・出生体重966gで出生し,RDSのために人工換気療法が開始された早産児を対象に,修正齢27~28週・日齢7~18日において実施された痛みを伴う処置に対する顔表情の変化をDVによって録画し,その内容を記述的に分析した.その結果,次の点が明らかになった: 1) 実施された処置は動脈カテーテル抜去・足底穿刺・栄養チューブ抜去であり,各処置には手順として絆創膏の除去が含まれた.2) 録画から抽出できた顔表情は8種類であったが,それらは閉眼・開眼・額の横皺・眉間の縦皺・鼻根の横皺・下眼瞼下の皺・鼻唇溝・開口の8要素で構成されていた。3) 8表情の内、開眼(顔表情2)を除いたすべてが3処置中に認められ、痛みを表現していると考えられたのは眉間の縦皺を作った顔表情5から8であった。4)処置の手順が進行するにしたがって顔表情は8へと進み、手順が終わるにしたがって、1に進んだ。5)顔表情7と8は皮膚に損傷を与える、あるいは、損傷した皮膚に刺激を与えることが顔表情7や8を出現させるものと考えられた。6)閉眼状態が多かったのは、早産児のstateの発達や室内照度の影響、痛み表現の顔表情における神経支配が関連しているのではないかということが考えられた。今後の課題は,得られた結果について事例数を増やすとともに修正齢の幅を広げることによって検証すること,既存の痛みのスケールとの関連で抽出された顔表情の実用性を検討することである。