本研究は,極低出生体重児を出産した母親の愛着の形成過程を明らかにし,それに関連する要因を検討し,母親の愛着を促進させる看護援助を考えることを目的とした.
在胎週数26w~35w,体重886g、1484gで出生した極低出生体重児5名の母親に対して,子どもとの初回,2回目,3回目の面会,以降1週間毎に退院時までの期間で,面会場面を観察し,その後にMullerにより開発されたThe Maternal Attachment Inventory(1994)を参考にして作成した愛着感情質問票と関連要因に関する質問紙調査を行なった.加えてSTAIによる不安の調査と半構成面接を実施し,以下の結論を得た.
1.母親の愛着の情動面は初期から比較的高く.望んだ出産であったことが関連していると考えられた.さらに面会の中で子どもの反応に感動したことや,夫や看護者などから得た心理的サポートにより危機的心理状態が立ち直っていったことなどが関連して早期に上昇した.
2.母親の愛着の母親役割の認識面は情動面より低く,変動しやすかった.特に子どもの反応の認知が低かった.関連する主な要因としては,子どもの反応への感軌母乳,育児行動の実施があった.
3.早期より育児行動にかかわった母親は,不安や母子分離感が軽減し,満足して退院を迎えていた.ただし早期に育児行動を促す時は,未熟な子どもの反応の読み取り方と対応に関する教育が不可欠であった.
4.家族,特に夫からのサポートや第一子の状態が母親の精神状態の安定に影響して,愛着形成に間接的にかかわっていた.
5.以上より,子どもの反応に感動できる機会や,早期の面会と育児行動の保証,母乳への援助,家族関係の調整などを通して主に母親役割の認識面を促す看護援助が重要であることが示唆された.