両親にとって児を抱くということは自然な行動であり,愛着形成や親としての自覚を高めるうえでも有効であるといわれている.当NICUでは体重,受胎後退齢,保育器内温度,摂取カロリー等の基準を定めて器外保育(コットヘ移床)を開始し,その後は両親が自由に抱っこできるようにしている.しかし在胎週数が少なく,出生体重の小さい児では,器外保育開始基準を満たすまでに日数を要する.そこで,保育器外からの面会や手指の接触だけでは得られにくい,肌と肌の触れ合いを提供するために,器外保育開始以前の一時的な抱っこを両親に勧めている.しかし,保育器収容中の抱っこは「低体温をまねく」「人工呼吸器装着中や酸素供給中は,児のバイタルサインが変動する」などの否定的意見もあった.そこで我々は,抱っこ開始の妥当な時期を明確にしたいと考え,バイタルサインへの影響について統計学的評価を行った.その結果週齢27遇以降で,いくつかの条件を設定すれば,保育器収容中に抱っこを行なっても,バイタルサインに影響を及ぼさなかった.