当新生児棟では, 1998年11月からMRSAを保菌している子どもと職員の除菌対策を開始している. まず除菌対策を開始した6回までのMRSA保菌者の除菌の結果をもとにして, 有効な除菌方法をみいだした. 保菌している子どもにはムピロシン軟膏による鼻腔・外耳道消毒, 皮膚の酸性水による消毒, それに加えて気管内挿管・気管切開をしている子どもは挿管チューブ, 気管切開チューブの周囲へのムピロシン軟膏の塗布を同時に行うことで, 除菌率があがった. 保菌している職員はムピロシン軟膏を鼻腔に1日2回7日間塗布することでほぼ除菌できた. 保菌している子どもと職員を同時に消毒することによりMRSA保菌者の減少に繋がった. また職員の配置転換時に保菌している職員によるMRSAの侵入が容易に起こることが判明した. このことから配属前の鼻腔培養検査でMRSAが陽性であれば, 速やかに除菌を行ない新たなMRSAの侵入を阻止することがMRSAの駆遂にとって重要である.
当新生児棟では基本的な接触感染に対する予防策を厳密に実施している。また感染予防策の原則のもと除菌対策の結果, 環境モニタリングの結果からMRSA感染症・保菌している子どものケアの内容を変更, 追加し実施している. そして, 子どもの正常細菌叢の形成を促すことでMRSAの定着する場をなくすことを重点におき, その上での厳重な手洗いを行うことがより効果的である.