本研究の目的は,新人看護師の就職後1年間における「医療事故防止上習得しておくべき知識」について,新人看護師の自己評価と臨床教育担当者による第3者評価をもとに,その習得状況の1年間の推移と,双方で「知っている」認識の一致状況を明らかにすることである.対象は2002年度,当施設新生児病棟に配属となった新人看護師5名とした.医療事故防止の観点から検討し独自に作成した「医療事故防止上重要な52項目」を用いて,就職時・4ヶ月後・8ヶ月後・12ヶ月後の計4回構成面接を行い,知識の習得状況を調査した.その結果は次のとおりである.1.「知っている」と判断された項目数は,個人別では就職時と比し,12ケ月後は有意に増加した.また質問52項目中,全新人看護師が「知っている」と面接者が評価した項目の割合は,就職時の12項目(23.0%)から12ヶ月後には35項目(67.3%)に上昇した.2.新人看護師と面接者の「知っている」の一致率は,就職時52%,4ヶ月後86%,8ヶ月後74%,12ヶ月後81%で,就職時と比べ12ヶ月後には高くなる傾向が認められた.3.質問52項目を4ヶ月後・8ヶ月後・12ヶ月後でそれぞれ「知っているべき」項目に分類し,全新人看護師が「知っている」と面接者が評価した割合は,4ヶ月後66%,8ヶ月後68%,12ヶ月78%であり,12ヶ月後新人看護師と面接者の「知っている」の一致率は84%だった.これらの結果から,新人看護師の教育担当者謹師は新人看護師が理解している内容を具体的に把握し,双方の「知っている・いない」の認識は一致しないことを意識して関わることが医療事故防止上の観点から重要である.