認知機能の低下と抑うつは,ともに睡眠・覚醒パターンの変調の原因となる.しかし,認知機能が低下した高齢者の場合,抑うつや睡眠障害を自覚症状から把握することは困難である.本研究では,抑うつ度の他覚的評価法として近年開発されたCornell Scale for Depression in Dementia(CSDD)を用い,療養型病院に入所していた高齢者39名(年齢84.1±8.7歳,改訂長谷川式簡易知能評価スケール8.6±6.2点,Barthel Index 43.2±30.3点)の59日間の睡眠指標との関連を検討した.その結果として,総睡眠時間とCSDD得点との間に負の相関が認められた(r=-0.423, p=0.007).以上の結果より,認知機能の低下した高齢者でも一般集団の場合と同様,抑うつ度と睡眠障害とが関連し,また,認知機能の低下した高齢者の睡眠援助において抑うつ度を考慮するには,CSDDが有効である可能性が示唆された.