重量物の持ち上げ動作において,荷台の高さの違いが四肢体幹筋に及ぼす影響を調べるために,筋電計を用いて実験を行った.対象は,筋骨格系障害の既往がない健常男子大学生10名(平均年齢22.2±0.9才,平均身長169.9±4.3㎝,平均体重62.3±4.0㎏)であった.被験筋は,持ち上げ動作に重要な僧帽筋,上腕二頭筋,脊柱起立筋,大腿直筋とした.荷台の高さを身長の40%,50%,60%に設定し,重量物の質量は体重の30%とし床面から荷台へ合計10回荷揚げさせた.得られた筋電波形のIEMGを求め,しゃがみ込み開始から重量物の離床まで(以下Prepare-Periodと略)と,重量物の離床から重量物の着床まで(以下Carrying-Periodと略)に分けて分析した結果,各荷台高においてPrepare-Periodでは荷台の上昇に伴い僧帽筋と大腿直筋の働きが大きくなることが認められた.また,Carrying-Periodにおいても荷台の上昇に伴い僧帽筋と大腿直筋が他の筋より大きな値となり,重量物の高位への持ち上げに重要な働きをすることが示唆された.