胎生18日から生後25週までの雌雄ラットを用い,膝関節の脛骨関節軟骨と胸部脊柱の椎間円板で,成長につれて膠原線維の量と分布がどのように変化するかを,光学顕微鏡(光顕)と電子顕微鏡(電顕)で調べた.胎生18日には,脛骨の近位骨端は軟骨で構成され,マッソン・ゴールドナー染色で膠原線維はほとんど認められなかった.生後0日には,膠原線維は関節軟骨の最も表層で弱く染まっただけだったが,成長とともに増加した.生後2,3週には,関節軟骨の表層の膠原線維が濃く染まり,骨端中心部の石灰化領域に近づくにつれて染色が薄くなった.生後9週には,関節軟骨全体が濃く染まった.このように,関節軟骨では,骨端の表面から中心部に向けて膠原線維が増加した.成長板は,生後2週で出現し,関節軟骨と対照的に膠原線維の増加はわずかだった.椎間円板では,胎生18日に最も周辺部の線維輪に膠原線維が認められた.膠原線維の増加は,成長とともに,周辺部の線維輪から椎間円板の中心部に,中心部では髄核に近い部位から椎体に向かって進行し,生後2週には椎間円板の膠原線維は均一に濃く染色された.生後9週以降は,椎間円板の所々に骨化が観察された.光顕で観察された線維は,電顕で膠原線維に特有な縞模様が観察されたので,膠原線維と同定した.また,光顕での染色の濃度と電顕での線維の増加とはよく相関した.このような膠原線維の増え方には,関節の運動,荷重や栄養の供給経路が関係しているものと推測される.本研究で,胎仔期の軟骨や成長板では膠原線維が乏しいことが示された.これらの軟骨は活発に増殖することが知られている.対照的に,関節軟骨や線維輪では膠原線維が豊富で,軟骨細胞はまれにしか分裂増殖しない.膠原線維の増加と軟骨細胞の増殖減少とは,関連があるのかもしれない.