右心不全に伴って,速筋および遅筋の筋小胞体Ca2+取り込み能が減少するという仮説を検証した.右心不全は,モノクロタリン(30 ㎎/㎏)を投与することにより引き起こし,投与後4週で,長指伸筋およびヒラメ筋を両後肢から採取した.筋の疲労耐性は,連続的な強縮刺激を行うことにより測定した.長指伸筋では刺激開始1分後,ヒラメ筋では4分後の張力を測定し,初期値に対するそれらの割合を疲労の指標とした.長指伸筋およびヒラメ筋の疲労耐性は,右心不全群で有意に低下した.筋小胞体Ca2+取り込み速度は,Indo-Ⅰを付加したホモジネートで測定した.その結果,Ca2+取り込み速度は,長指伸筋で25.4%(p<0.01),ヒラメ筋で30.4%(p<0.05)低下した.このCa2+取り込み速度の低下は,筋小胞体Ca2+-ATPaseタンパク量の低下と一致した.筋小胞体Ca2+取り込み能の低下は,筋張力の低下を引き起こし,このCa2+ handlingの低下は,少なくとも右心不全による運動耐容能の低下の一因であろう.