様々な大きさのジストロフィンアイソフォーム(427kDa, 260kDa, 140kDa, 116kDa, 71-75kDa)が広く体内に存在していることはよく知られている.中枢神経系においては71-75kDaのDp71が著明に多く,毛細血管の内皮の基底膜に接しているアストロサイトの細胞質に局在することが報告されている.しかしながらDp71の機能についてはよくわかっていないことが多い.そこで今回,脳組織におけるDp71の役割を調べるために,コントロールマウス(wild-typeマウス)およびデュシャンヌ型筋ジストロフィーモデル動物であるmdxマウスを用いて実験的脳梗塞を作成し,その治癒過程を形態学的に観察した.また,GFAPおよびDp71に関して生化学的に分析をおこなった.HE染色およびGFAP免疫組織学的染色の結果から,形態学的にはmdxマウスとコントロールマウスの脳に違いは認められなかった.しかしながら,mdxマウスの脳において,Dp71の発現量がコントロールマウスよりも少ないことがわかった.またmdxマウスにおいて,脳梗塞の修復過程におけるアストロサイトの反応がコントロールマウスよりも弱いことがわかった.これらの結果から,mdxマウスの脳において,アストロサイトの機能,アストロサイトの血管新生に関わる機能の障害されていることが示唆された.