3種の無脊椎動物のカロチノイド-蛋白質複合体を抽出し,吸収スペクトル,セルロースアセテート電気泳動,補欠分子族カロチノイドの分析を行った。又,加熱前後の物理化学的性状の変化を調べた。
1) アカテガニ甲殻から得た赤い色素は455nmに吸収をもち,アスタキサンチン他を補欠分子族とするカロチノプロテインである。加熱すると吸収極大は475nmに移り,電気泳動易動度も減少した。
2) バフンウニ卵巣の色素は黄色のカロチノイド-リポ蛋白質複合体であって,加熱すると電気泳動易動度の減少がみられたが,最大吸収波長には大きな変化は認められなかった。カロチノイドの組成は,卵巣のカロチノイド組成にほぼ等しく,エキネノンの他に数成分のカロチノイドが認められた。
3) イトマキヒトデの表皮の赤い部分と青い部分から抽出した色素は数種のカロチノプロテインの混合物であって,赤い表皮から得たものは400と600nmに最大吸収を有し,青い表皮から得たものは400pnmに大きな吸収をもち,他に475,515,600,640nmにも小さな吸収が認められた。それぞれの色素を加熱すると,最大吸収は465nmに移り,電気泳動的にも単一の成分となった。補欠分子族カロチノイドとしてアスタキサンチンの他に未同定の2成分のキサントフィルを認めた。