集積培養法によって土壌からフタル酸,イソ-およびテレ-フタル酸を唯一の炭素源として生育する14株が得られた。これらの菌株はフタル酸異性体の利用性の相違に基づき,7群に分けられた。このうちで,フタル酸に最も良く生育したNa3-31株を用いて実験を行なった。
フタル酸酸化活性の高い菌体を得るには,培地の窒素源は硝酸アンモニウムが良く,鉄イオン濃度はFeSO4・7H2Oとして0.5㎎/100ml程度が良かった。重金属により本菌株の生育およびフタル酸酸化活性が完全に阻害された。
本菌株のフタル酸代謝系は誘導的であり,培地中にフタル酸が無くなると,その代謝活性は急激に減少した。高活性の菌体を多量に得るには,集菌1時間前に0.05%程度のフタル酸を再添加して集菌すれば良い。
本菌株は生育基質として種々の芳香族化合物を利用したが,フタル酸生育菌体は,フタル酸,カテコールおよびその誘導体のみを利用した。プロトカテキン酸を利用できないので従来提示されているプロトカテキン酸を経る代謝系とは異なる経路で本菌株はフタル酸を代謝分解していると推測された。