1. 1954年から1963年にわたって瀬戸内海とその近辺約60の地点で採集されたホンダワラ科藻類の分類を行ない,21種2変種4品種を確認した。
2. これにこれまでの報告の結果を加えて瀬戸内海におけるホンダワラ科の32種2変種4品種の藻類の分布を示した。
3. 瀬戸内海を紀伊水道から播磨灘までの海域,備讃瀬戸から芸予諸島にいたる海域,安芸灘,広島湾を含む海域,伊予灘,周防灘およびその近辺の海域の4つの海域に分け,各藻類の各海域における出現率を検討して各藻類の分布特性を調べた。
4. その結果,ヒジキ,クソタレモク,オオバモク,イソモク,トゲモク,ホソバモク,スギモクは外洋的性格のより強い種であることがわかった。また,ヒジキの一品種,マメタワラ,ヤツマタモク,カラクサモク,アカモク,ノコギリモク,ヨレモク,ナノリソ,フシスジモク,オオトラノオ,エンドウモクは内湾的性格のより強い種であることがわかった。
5. ヒジキの一品種は,外洋的性格の強い原種が内湾において適応を示した形態ではないかと考えられる。また,アカモクの一品種であるクソタレモクは,内湾的性格の強い原種が外洋性の強い海域において適応を示したものではないかと考えられる。