鶏の卵管粘膜上皮の構造と,これに関連して卵管内の精子移動の機構を,走査電子顕微鏡を用いて形態的に観察した。
卵管の粘膜上皮は,卵管の全長にわたって線毛細胞と非線毛細胞の2種の細胞から構成されていた。しかしこの両細胞の細胞形態,分布状態は,卵管の各部位によってかなり異なっていた。とくに漏斗部と子宮・腔移行部は類似の上皮構造をもっており,ここでは非線毛細胞を欠き,線毛細胞のみから成っているのが特徴であった。
一方,実験的に卵管腔部に注入された精子は・漏斗部と子宮・腔移行部に選択的に貯溜する傾向がみられた。この両部への精子の貯溜は,該部の線毛細胞の強力な線毛運動によって精子の前進が阻止されるためと推察された。