今日,石油の流出事故による沿岸水域の油濁は世界的に深刻な問題となっている。1973年夏期と1974年冬期時点における燧灘17測点の底土に含まれる炭化水素を検討した結果を報告する。
(1) 底土から脂質を抽出し,その炭化水素のガスクロマトグラフ分析を行い,生物由来の炭化水素(プリスタンおよびスクワレン)とn-アルカンを検出した。
(2) (プリスタン+スクワレン)/n-アルカンの比の分布とこの比が脂質含量と一致している事実を考え,この海域の底土中の炭化水素は生物起源のものが多いことを認めた。
(3) この時点でこの海域は・魚に石油貝を与えるほどに油濁されていないと考えられる。