鶏呼吸器性マイコプラズマ病に関する基礎的検討の一環として,本病の一実験感染系確立の為に,さきに著者ら(1980)21)はM. gallisepticum (MG) 1RF株を用いて,今回と同様な実験を行った成績について報告した。今回は鶏大腸菌症の原因ならびにMG感染症の混合感染菌として重要な,E.coliの気嚢内人工感染による初生ヒナに対するvirulenceの程度を知る目的で本実験を行った。
E. coli TK18-A株(O群2)液体培養の10倍段階希釈(5.4×10^0-5/0.4ml)を,ブロイラー初生ヒナ(雄)の右後胸気嚢内に接種し,4週間観察した。各実験群20羽宛のヒナにつき,臨床症状,増体量,飼料要求率,病理変状,各臓器からのE. coli分離等の項目につき検討し,下記の成績が得られた。
1) 全群呼吸器症状はみられず,各群ヒナの死亡は主に感染後7日以内にみられ,例外的に10及び14日後1例ずつの死亡がみられた。菌接種0~10^5 CFU各群の死亡率は,それぞれ0,5,5,40,60,100,100%であった。供試菌のLD50は5.4×10^2.4 CFUであり,接種菌10CFU以下では死亡率は極めて低く,また接種菌数が減少するに従い,死亡時期がやや遅延する傾向がみられた。
2) 増体量・飼料要求率については,早期死亡例が多く,各群間の比較は困難であった。40%のヒナが生残した10^3 CFU菌接種群とそれ以下の菌接種群での成長曲線では,10^3 CFU菌接種群が最低を示した。
3) 肉眼病変出現率と接種菌数とはほぼ平行する傾向がみられ,LD50以上の菌接種群で病変陽性の傾向がみられた。気嚢病変は菌接種側で高率にみられた。10^3 CFU菌接種死亡例で顕著な病変が多数みられた。気嚢病変は,10^2-5 CFU菌接種群にみられた。
4) 以上の病変は,病理組織学的にも,全体的に滲出性の炎症病相が主体で,従来記載の大腸菌性敗血症病変とよく一致した。
5) E. coli分離率は接種菌数とほぼ平行し,10^4-5 CFU菌接種群死亡例では100%で大部分のヒナは典型的な急性敗血症死とみられた。
6) 本菌株のAID50とLD50の菌数はほぼ同一とみられた。