in vivoでの抗菌剤効果の基礎的検討の為に,初生ヒナを用いた一実験感染系を確立する目的で,以下の実験を試みた。
供試菌Mycoplasma gallisepticum (MG)1RF株の新鮮液体培養10倍段階希釈の0.4ml/ヒナを,ブロイラー初生ヒナ,雄の右後胸部気嚢内に接種し,4週間観察し,接種菌のvirulenceの程度を調べた。実験群は20羽/群とし,非感染対照を含む6群を設定した。接種菌数は4×10^1-5 CCUの5段階とした。各実験群のヒナについては,臨床症状を観察し,増体量,飼料要求率を調べて,毎週各群5羽ずつを殺して剖検し,MG分離,MG血清凝集素価の推移,肉眼ならびに組織病変等について経時的観察を試みた結果,下記の成績が得られた。
1) 全期間,全実験群において呼吸器症状はみられなかった。しかし,接種菌数の多い群で頸部捻転と脚麻痺を主徴とする死亡ヒナがみられ,これらのヒナの脳病変は病理組織学的検査の結果,脳軟化のそれに一致した。それらヒナの一部の脳からはMGが分離された。
2) 接種菌数の多い群では.ヒナの増体量は少なく飼料要求率は悪かった。
3) 接種菌数の少ない群での死亡率は極めて低く,接種菌数の多い群で14日令まで高く,その後28日令までは死亡ヒナはみられなかった。
4) 気嚢および気管の病変出現率は,MG接種菌数の多い群で高く,また病変の程度も強いものが多かった。なお低率ながら各群のヒナに肝の点状出血や,線維素性肝包膜炎,壊死巣などが,MG接種菌数の多少にかかわらず認められた。
5) MG分離率は,気嚢よりも気管において高く,またMG非接種側気嚢よりもMG接種側気嚢において高かった。
6) MG血清凝集素価は,1週令殺時のヒナ群では低く,2週令時以後の殺ヒナ群で上昇がみられた。MG接種群間では接種菌数の多少にかかわらず凝集素価に大きな差は認められなかった。
7) 供試菌株のAID50は10CCU前後とみられた。
結論として,供試1RF株はM. gallisepticumとしては,ヒナに対し比較的強毒な菌株である事が知られた。