1969~71年に,わが国各地の成鶏および死ごもり卵から分離された85株のMycoplasma gallisepticum (MG)と参考菌株KP-13,1RF,SP-23GおよびTS-18Gの4株について,現在鶏のMG感染症の予防治療に用いられている主要抗生剤TC,SPMおよびTSとそれに加えてCPおよびSPCTに対するin vitroでの最小発育阻止濃度(MIC)を,液体培地希釈法(broth dilution method)により検討した。
その成績は,下記に示すとおりである。
1) TSについては,MICが0.1μg/ml以下を示す菌株が11%,また3~30μg/mlの範囲を示す菌株が約80%みられた。TSについてのMICの幅は<0.1~100μg/mlであった。2) SPMについては,MICが100μg/ml以上を示す菌株が62%,0.3~3μg/mlの範囲を示す菌株が28%みられた。そのMICの幅は0.3~100ug/ml以上であった。3) SPCTについては,MIC10μg/mlを示す菌株が67%みられ・そのMICの幅は1~30μg/mlであった。4) TCについては,MIC1μg/mlを示す菌株が85%あり,MICの幅は0.3~3μg/mlであった。5) CPについては,MIC10~30μg/mlを示す菌株が91%あり,MICの幅は3~100μg/mlであった。6) 死ごもり卵由来MG株において,孵卵前に卵がTS液に浸漬された卵由来株と,同液非浸漬卵由来株の間には薬剤感受性の差は認められなかった。
以上の成績から,TSとSPMについてのMICは共に分散している事が知られ,それに対して他の薬剤のMICは,ある一定薬剤濃度を中心に比較的集中している事が知られた。
関東と九州というように菌株の分離地域の異なる菌群間で,TSとSPMのMICパターンに差異がみられ,前者は一定薬剤濃度に集中し,後者は広い範囲に分散する傾向がみられ,菌株の薬剤感受性に分離地域による若干の差異がみられた。
供試菌株のCP,TCおよびSPCTに対するMICは,1965年のNEWNHAMとCHU18)および1966年の松井ら12,13)の成績と比較すると,それらのMICは数倍増加していた。さらにTSとSPMについては,最近の数年間に一部の菌株では,約1,000~10,000倍の耐性化が認められた。一方,TCに対する耐性増加は10倍程度であった。