最近走査電子顕微鏡による精子の形態学的研究が行なわれるようになり, 哺乳類の精子は凍結保存により先体に著しい悪影響を被ることが知られている。一方家禽精子においても哺乳類の精子と同様に融解精子先体に著しい変化の認められることが報告されているが, 凍結融解操作によってもたらされる一連の精子の損傷について観察した報告は少ない。
本研究は光学顕微鏡と走査電子顕微鏡を用い, 錠剤化凍結法とストロー凍結法により, それぞれ二種類の希釈液を用いて凍結処理し, 融解後の鶏精子の活力および崎形精子の微細構造について観察した。その結果, 走査電子顕微鏡を用いれば, 従来の光学顕微鏡下で通常認められる首曲り畸形精子の他に精子先体の離脱や, 精子頭部末部の膨化が認められた。しかし凍結法, 希釈液によるそれら畸形精子の出現割合の差異は明らかでなかった。