本稿の目的は,イノベーションを実現する際に欠かすことができないプロダクト・チャンピオンに関する議論を,先行研究のレビューを通じて整理した上で,その研究領域の課題と今後の研究の方向性を提示することにある。プロダクト・チャンピオン(以下,PC と略す)の研究は,1960年代に行われたSchon の研究を嚆矢とする。その後,多くの研究者による成果が蓄積されてきたが,そこでの分析対象は必ずしも統一的なものではなく,様々な分析結果がランダムに手がけられてきた傾向にある。
本稿では,こうした既存のPC 研究に新たな分析視角を持ち込むため,これまでの研究を整理し,そこでの課題を明確にした上で,PC 研究が目指すべき方向性の提示を行った。こうした作業を進めることで,PC 研究の進展を促しより統一的な視点を持つ新たな研究の概観を示した。