中等教育研究紀要 /広島大学附属福山中・高等学校 46 巻
2006-03-20 発行

「人間の安全保障」を視点とした公民科授業開発 : 単元「国際社会の諸課題」を事例として <第2部 教科研究>

樋口 雅夫
全文
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Fukuyama-ChutoKyoiku-KenkyuKiyo_46_275.pdf
Abstract
本稿は,社会構成主義的考え方を具体化したものとして,国際政治学の分野において近年注目されている「人間の安全保障」論を用い,高等学校政治・経済の単元「国際社会の諸課題」を事例とした授業開発を目指すものである。現代国際政治学の分野においては,現実の国際政治現象の変化によってその理論的枠組みを変化させる研究方法が主流である。これは本授業構成においても通じる考え方であろうと考えている。本学習指導案は,「人間の安全保障」論を用いて現在の国際社会が抱える諸課題の現実とその解決策を探求させるところに主眼を置く。しかし,この理論を絶対的なものとしては捉えさせない。終結において,「人間の安全保障」論の課題について言及し,さらに新たな国際社会を説明する理論を探し出す可能性を生徒に委ねたい。このことが,課題を自ら見つけ,探求し続けられる公民科授業の本質であると考えるからである。