当院未熟児室では,MRSAの疫学的指標としてMRSAサーベイランスを行っている.平成16年2月と11月にMRSA保菌児の急激な増加があった.その背景には,2月には固定チームナーシング制導入があり,11月までに5人のスタッフの勤務交代があった.また各月ともMRSA保菌状態が長期化していたl,500g未満の極低出生体重児が入院していた.そこで感染経路を同定するために,NICU内の環境調査,スタッフの鼻腔・手指培養の疫学調査と,スタッフに対するMRSA感染に対する認識調査ならびに感染予防対策に関する討論を合せた感染予防対策プログラムを行った.細菌培養検査の結果,スタッフからはMRSAは検出されなかったが,MRSA保菌児の保育器周囲に同一型のMRSAが検出された.また,スタッフの感染予防に対する認識については,手洗いが疎かであり,ガウンテクニック法に問題あると認識していた.これらの結果をもとにスタッフ間で討議し,新しく感染予防対策を考案し,実施開始後2カ月でMRSA保菌児は0となった.以上の結果からMRSAの低減には,MRSAサーベイランスだけでなく,新生児の環境やスタッフ自身の細菌培養検査と,スタッフの認識調査ならびにグループ討議をあわせた動機づけプログラムが有用であると考えられた.