先天奇形の子どもが産まれた両親の精神的ショックは計り知れない.さらに,母子分離の環境になることで,両親の子どもに対する不安は強い.今回,アペルト症候群で外表性の障害を有する子どもの出生に対して,強いショックと不安を示していた母親に対して,"あかちゃんメモ"という介入ツールを用い子どもに対する心理的変化を確認しながら援助を進め,最終的に2ヶ月で退院に至った事例を経験した.そこで当事例を通して"あかちゃんメモ"という介入ツールを用いたケアの有用性について検討をしたので報告する.事例は29歳の初産の母親1名であり,子どもの入院期間は平成14年6月から同年8月であった.データは"あかちゃんメモ"に母親が記載した内容と,看護記録に記載された入院中ならびに退院後の外来受診時での患児の家族への面談内容や,電話による面談内容とした."あかちゃんメモ"と,面談内容を記した看護記録は母親の同志のもとで預かり分析を行った.分析の結果,"あかちゃんメモ"から母親の心理変化を1.ショック・否認の時期,2.葛藤の時期,3.自信が芽生えた適応の時期,の3期に分けて考えることができた.そして看護援助として時期に合わせた見守りや育児支援を行ったことが子どもの受容につながったと思われる."あかちゃんメモ"はコミュニケーションツールのみならず母親の心の状態を知るアセスメントツールとして有用であったと考える.