本稿では中国・四国地方における県独自の伝統的工芸品指定制度に焦点を当て,各県における指定制度の運用状況を整理し,その指定品目数や指定年月日等の基本情報を把握した上で,各県の指定根拠例規の施行・改正経緯や特徴点を確認する。そして,その現状把握から見出される課題や問題点を踏まえた提言を行う。
各県の伝統的工芸品の指定状況を調査した結果,総数は218品目に及んだ。伝統工芸品に関する基礎的情報の更新は,今後の研究促進や伝統工芸産業存続に不可欠な営為である。
また,助成や補助金といった従来の支援振興も大切であるが,工芸品が持つ歴史性といった不可視的な要素にどう指定制度が貢献できるのか,という視点も重要である。一つの伝統的工芸品が県から指定を受けることによって,工芸品としての歴史的価値が付与されるためには,その指定制度の根拠となる要綱等の歴史性こそ確固たるものでなければならない。