本稿は,中国の8大学の日本語専攻の学部生を対象とした自由記述式アンケート調査を通じて,大学生の怒り誘因,怒り相手,および性差と学年別による両者の相違を明らかにすることを目的とする。性差から見れば,1. 男性は外的要因による怒りの割合がより高いのみならず,低学年(1・2年)の男性は同学年の女性よりかなり高いこと,2. 女性は内的要因による怒りの割合がより高く,また学年が上がるにつれて割合が高くなる傾向があること,3. 女性より男性の方が自分の能力不足やネガティブな性格に対する怒りの割合がより高いことなどがわかった。学年別に見れば,学年を問わず,ルームメートの迷惑行動や友人の裏切り,意見の不一致などに怒りを感じることが多く,全寮制との相関関係が示される。同時に,クラスメートへの怒りは誘因が多様化しており,キャンパスが「ミニ社会」と言われる通り,すでに健全な社会的関係が築かれている。また,キャンパス外の見知らぬ人と自己に対する怒りの割合は,高学年の方が著しく高く,これはまもなく社会進出となり,将来への不安や自己成長への期待に気をもんでいるように思われる。最後に,大学生には自分への感情管理,他人への共感など,大学側と教師には「人間中心」主義,SNSにおいては多方面の協調を求めるべきだという解決策を考えてみた。