日本の国内外において,食品の廃棄物に関する関心が高まり,課題解決の方策が検討されている(環境省,2017;農林水産省,2019)。また,企業では,MFCA(Material Flow CostAccounting)などのマネジメント手法が開発され(経済産業省,2009),普及に向けての研究が進められている(安城,2011;萬田,2012;加登・山田,2019)。本研究では,事業において,生産段階における廃棄を含む食品の廃棄物(食品ロス)低減を既存のマネジメント手法に頼らない方法でも実施できる可能性に関する研究の第一弾として,ポーター(1985)およびPorter(2008)のバリューチェーンを議論の枠組みに利用した地域企業のケーススタディを行う。顕在化した食品ロスを直接的な発生要因を解消するなかで関連製品として開発する方法の特長を整理した結果,第一に,既存のマネジメント手法に頼らない,地域産物を素材とした独自の方法で食品ロス低減を基盤とするビジネスモデル開発に取り組む現状を理論的に整理することができた。第二に,地域産物に関する食品ロス低減に取り組むことによって,1つの企業としてのみならず,所在する地域の持続的な成長にコミットメントする機会を創出することから社会的企業として位置付ける可能性を指摘した。