本稿の目的は,組織が活性化するための職場づくりに必要な組織市民行動を促す人材育成についてキャリアステージによる違いがあるか否かを探索することである。本稿では,上司のソーシャル・サポートおよびOJT,経営者の行動とビジョンに焦点を当て研究を進めた。そして,若年層従業員および中堅層従業員とキャリアステージをわけて組織市民行動に及ぼす影響に違いがあるか否かについて検討を行った。その結果,以下の4つの事実が明らかになった。第一に,若年層従業員の経営者の行動とビジョンは組織市民行動の「愛他的行動」に正の有意な傾向,組織市民行動の「スポーツマンシップ」に正の有意な影響を示した。第二に,中堅層従業員のソーシャル・サポートおよびOJT は組織市民行動の「愛他的行動」に正の有意な影響を示した。第三に,中堅層従業員の経営者の行動とビジョンは組織市民行動の「愛他的行動」「スポーツマンシップ」に正の有意な影響を示した。第四に,若年層従業員および中堅層従業員の2つの母集団間のパス係数において差の検定を行ったところ有意な差は確認できなかった。この結果から,組織市民行動を促す人材育成においてキャリアステージの違いによる統計学的な有意差は認められなかった。しかし,組織市民行動を促すためには若年層従業員および中堅層従業員ともに経営者の行動とビジョンが,中堅層従業員にはソーシャル・サポートおよびOJT が影響を及ぼす一定の傾向を示唆した。