高齢化の進展に伴い,生活状況や価値観が一層多様化するだろうと予測される新たな高齢者像にも対応できるような介護サービスの提供を考慮していく必要がある。本稿は,施設利用者である高齢者(以下利用者)の生活状況と深く結びついた介護の価値観に焦点を当て,利用者と介護職の両者に介在する重要なコントロール要因としてホスピタリティを位置づけた上で,介護職におけるホスピタリティの重要性を検討したものである。ホスピタリティの基本的概念を概観し考察を加えた。さらに,ホスピタリティは対人関係において実現されるものであることを示唆し,介護サービスの構造を欲求に見合う機能的等価価値と位置づけられると考えた。また,介護の場においてホスピタリティの実践のために必要な能力について検討した。ホスピタリティの応用が介護職と利用者との信頼関係に大きく影響し,ホスピタリティを行動の側面から捉える場合の指標となった。