太平洋諸島フォーラム(PIF)は,2005年に採択したパシフィック・プランにおいて,グッド・ガバナンスを「地域的規範」として位置づけた。本稿は,なぜ,どのようにPIFがグッド・ガバナンスという「グローバル規範」を「地域的規範」として受容するにいたったのか,その過程を明らかにし,そこから地域機構としてのPIFがどのように変容しつつあるのか考察を試みるものである。1990年代,太平洋島嶼諸国は,ガバナンスが問題視される状況にあり,援助ドナーは,これら諸国に「グローバル規範」としてのグッド・ガバナンスの受容を迫った。こうした圧力を受け,PIFは,グッド・ガバナンスを「地域的規範」として唱えるようになったが,それは実効性を欠いたものにとどまった。しかし,域内の政治不安,およびグローバル化への対応を契機に,PIFは,次第に,より実効性を伴ったグッド・ガバナンスを推進するようになる。これによって,PIFは,いちだんとグローバルな規範秩序に組み入れられていくとともに,加盟国間関係によって成り立つ国家間機構という,その地域機構としてのあり方を転換しつつあると言うことができる。