社会福祉法人は, 公益事業の達成と収益性の維持という二つの目標を両立させていく中で, 一定の利潤を得て, その存続を継続していかねばならない。社会福祉法人がその活動において適格な経済主体となりうるためには, その判断の基となる会計基準の確立と情報開示が必要不可欠である。しかしながら, わが国では非営利組織の会計基準はそれぞれに個別化され, 統一的な会計基準が存在せず, 情報開示に関してもかなり後れを取っている。
本稿は, 社会福祉法人である特別養護老人ホームにおける社会福祉法人会計を基に, 会計情報の機能について議論後, わが国における福祉法人会計の変遷と財務諸表体系を概観する。
設例においては, 国庫補助金等特別積立金の取り崩し処理を中心に分析し, 社会福祉法人会計の問題点を整理する。
米国における非営利組織体の財務諸表を開示する基本原則においては, 何を重視してどのような目的を立てたのかその見解が示されており, 有用な会計情報を形成する上で重要な示唆を与えてくれるものと考える。そこから, わが国における社会福祉法人会計の課題とそのあり方を考察するものである。