本稿では, 世界経済に大きな影響を与えたサブプライム・ローン問題に端を発する金融危機の中で公正価値会計に対する批判が高まったことについて, 銀行の自己資本比率規制に焦点を当てて検討している。
金融市場の混乱は, 公正価値会計から取得原価会計に回帰する根拠にならず, むしろ, 取得原価会計の適用によってリスクが表面化しないことで, 更に事態が悪化するおそれもある。
対処しなければならない問題は, 公正価値の測定の正確性や信頼性をどのように確保するのか, また, 金融システムの安定性の確保の観点から規制・監督と政策上の対策をどのようにするべきかである。本稿では, これらの問題について, 俯瞰的な見地から議論することとする。