「緊張します…」ある生徒は, この授業がはじまる最初の時間で私に言った。また, ある生徒は, この授業の最後のまとめである発表にのぞみ, 同じことばを私に言った。では, なぜ生徒は緊張するのだろうか。どちらの生徒も, この「卒業論文をつくろう」という授業で, 果たしてきちんと最後までやりとげることができるのかという不安, 自分が積み上げてきた研究をみんなに理解してもらえるかどうか, という不安が, 冒頭のことばを言わせたと思われる。わずか半年の研究, わずか10分間の発表を前にして生徒が発することばは, いかに主体的にものごとに取り組む姿勢を持ちつづけ, 豊富な表現力で自分の考えを他者に伝えることが生徒にとって大きな壁となっているかを物語っているともいえる。生徒一人一人の興味・関心を生かしながら, これらの姿勢や能力を育成するために行った実践を考察し, 報告する。